2008年04月16日

未来は奈落へ沈むとも

浪花花形歌舞伎 第二部 「双蝶々曲輪日記」 角力場/難波裏/引窓
4月13日(日) 3:05pm 大阪松竹座 1階2列センター

出演: 中村亀鶴 中村翫雀 中村壱太郎 片岡孝太郎 坂東竹三郎 ほか


人気大関 濡髪長五郎がにわか力士の放駒長吉にわざと負けるいきさつを描く「角力場」
濡髪が恩義ある与五郎を助けるために過って人を殺してしまう「難波裏」
そしてこのお芝居の眼目ともいえる「引窓」では、お尋ね者となった濡髪(亀鶴)が、八幡村の郷代官の後妻となり義理の息子の与兵衛(翫雀)とその女房のお早(孝太郎)と暮らす実母お幸(竹三郎)に暇乞いに訪れる場面から始まります。

濡髪、お幸、お早、与兵衛、このお芝居の登場人物はみんないい人で、それぞれが互いを思いやる姿が温かく、そして切ない。そしてその思いやりの中心にいる人物はお幸・・・もっと言えば、お幸が我が子濡髪を何とか生かそうとする母心に、お早も与兵衛も、当の濡髪までも応えようとしてるかのようでした。

坂東竹三郎のお幸は子を思う母とはこうあるものかと実感させられる名演です。
与兵衛が手にした濡髪の似顔絵が描かれた手配書を買いたいというお幸。
「鳥の粟を拾うようにためておかれたその銀。仏へあげる布施物を費やしても、この絵姿がお買いなされたいか」と問う与兵衛に、「未来は奈落へ沈むとも、今の思いには替えられぬわいの」と絞り出すようなお幸の言葉にたまらず落涙。

「引窓」とは明かり採りのための天窓のことで、この窓がこの物語のもうひとつの主役。
郷代官として夜の探索の任を負う与兵衛に、引窓を明けて「まだ日は高い」と言うお早。
「私に縄をかけて与兵衛に渡さなければあの世の夫への義理が立ちますまい」と濡髪に諭されてお幸が濡髪を縛る縄は引窓を開閉する紐。ここで紐を引くために引窓が閉まります。
「受け取って手柄に召され」と濡髪を引き渡そうとするお幸に、濡髪の縄を切る与兵衛。
すると引窓が開いて月の光が差込み、与兵衛は「夜が開けた。みどもの役目は夜ばかり」と濡髪を逃がすのです・・・というように、引窓の開閉で実際の時とは別に、それぞれの人の心の“昼夜”を表わすというのもいかにも歌舞伎らしい演出で印象的でした。


位置情報 この日は千穐楽とあって客席でたくさんの方にお目にかかることができましたが、終演後には「風知草」のとみさん「楽しい☆おいしい☆うれしい☆Happy」のcocoさん「星月夜に逢えたら」のムンパリさん、そして「月明らかに星稀に」のかずりんさんとご一緒にしばしティータイムで盛り上がり、話題は早や松竹座の七月大歌舞伎にまで。短いながら濃厚な時間を過ごしました。みなさま、ありがとうございました。


亀鶴さんの濡髪。ほんとに錦絵のようのごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 322 わーい(嬉しい顔) vs 321 ふらふら)
ニックネーム スキップ at 23:31| Comment(8) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能
この記事へのコメント
「引窓」良かったです♪
あれを引窓っていうんですねえ〜〜。
私は、題名から、母と子が窓を(横に)引いてご対面〜〜
かと、想像していたのですが・・・
いや〜〜〜深かった!実に深い。
ああいう粋なのを見せられたら、歌舞伎の底なし沼からまだまだ抜けられないです〜。
あとどれぐらいあるんだろう?今回みたいなステキな演目・・・。ふ〜〜〜♪♪
Posted by かずりん at 2008年04月18日 21:02
日曜日は、とみさんご紹介でスキップさんはじめ皆さんにお会いすることが出来て、大変楽しゅうございました!
ありがとうございました〜〜(^0^)

ワタクシはまだこれからナニハナの感想を書くところでございます。二部、ほんとに良かったですネ☆
Posted by coco at 2008年04月18日 21:27
♪かずりんさま

ほんとうに歌舞伎ならでは、という演目でとてもおもしろかったですね。
歌舞伎の世界って、一見リアリティとは対極の位置にあるようでいて、
登場人物の心情とかはもろダイレクトに伝わってきてとても不思議な世界。
一度踏み込んだら二度と抜けられない笑)、底なし沼かアリ地獄か・・・(爆)。
Posted by スキップ at 2008年04月19日 04:23
♪cocoさま

こちらこそお目にかかれて、cocoさんの歌舞伎や文楽への造詣深いお話も
聞かせていただくことができて、とてもうれしかったです。
cocoさんのレポを読ませていただくのを楽しみにしています。
今度はお江戸でもお目にかかりましょう。
あ、七月松竹座にもぜひいらしてくださいね!
Posted by スキップ at 2008年04月19日 04:29
楽日の引窓の濡髪のまなざしが眼にやきついています。
うつくしいお芝居でした。

観て感動したお芝居のこと、これからの楽しみのことで盛り上がれるのは、うれしいものですよね!!
Posted by 火夜(熊つかい座) at 2008年04月19日 12:07
♪火夜さま

亀鶴さんの濡髪は、いつも悲しみを湛えたような目をしていて、
それでいて色っぽく、本当にステキでした。

はい。短い時間でしたが、それはにぎやかでした(笑)。
火夜さんとも、機会があればぜひご一緒させていただいて
ともに盛り上がりたいです!
Posted by スキップ at 2008年04月20日 01:59
スキップさん、先日はごいっしょできて楽しかったです。ありがとうございました。
感想を書いてからコメントを・・・と思いましたが、観念して(笑)。
「双蝶々曲輪日記」は初見でしたけど、やっぱりよくできたいいお話ですね。歌舞伎ってイイなあと思える演目です。亀鶴さんも素敵でしたし、竹三郎さんには今年もヤラレてしまいました。来年は薪車さんをたっぷり見たいですね。
歌舞伎の沼も地獄も奈落もごいっしょに・・・(笑)。
Posted by ムンパリ at 2008年04月23日 12:53
♪ムンパリさま

こちらの方こそ、とても楽しかったです。ありがとうございました。
・・・と言いつつ、次にお目にかかる機会も近づいて参りましたが(笑)。
この第二部は登場人物もバラエティ豊かでおもしろかったです。
何といってもお相撲さんですからね。
亀鶴さんでどうなんだろ?と思いましたが、ハマッていましたね。

はい。地獄の果てにも奈落の底までもぜひご一緒に。
Posted by スキップ at 2008年04月24日 02:33
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