2007年03月04日

砂漠のモーテル

fool.jpgフールフォアラブ
2月27日 7:00pm  シアター・ドラマシティ

作:サム・シェパード
演出:行定勲
エディ:香川照之  メイ:寺島しのぶ  
マーティン:甲本雅裕  老人:大谷亮介

舞台はニューメキシコのモハベ砂漠にポツリと建つさびれたモーテル。この部屋に住むメイにはるばる会いに来たエディはメイを求め、一緒に行こうと誘うがメイは頑なにそれを拒み、激しく争う二人。そこにやってくるメイのボーイフレンド マーティン。このマーティンにエディは「本当は俺たちは母親違いの兄妹だ。自分たちは恋に落ちた後にその事実を知ったが、二人とも求め合ってしまうのだ・・・。」と告白を始める。そしてこの三人のやりとりを傍観者のごとく聞いている一人の老人・・・。

アメリカの現代劇というのが些か苦手です。特にアメリカの作家の、アメリカという国自体をとらえ批判するようなニュアンスを持つ、生活に根ざしたリアリティ漂うようなお芝居は、文化や生活の埋めることのできない深い溝のようなものと、日本人が演じるアメリカ人に限界を感じ、理解が及ばないフラストレーションに陥ることが多々あります。たとえばロスやNYの見慣れた光景ならいざ知らず、“ニューメキシコのモハベ砂漠にポツリと建つさびれたモーテル”なんて、なかなか実感として想像つきにくい。実はここぞ観る側のイマジネーションの働かせどころなのでしょうけれど。

演技派としてならした主演の二人をしてもこのシチュエーションは手強かったかな、というのが最初の印象。気鋭の映画監督の初演出ということで注目した行定勲さんの演出は、光と音を効果的に挿入していたこと以外は思いのほか正攻法、オーソドックスな演出、というのが次に感じたことでした。

とはいうものの、実力ある役者さんの感情をぶつけ合うような迫力あるセリフの応酬は見応えたっぷり。香川照之のエディは、父を追想するモノローグや、冗舌に喋りながら苛立ちやある種の苦さの混じる表情、メイを持て余し、自分のメイへの気持ちさえ持て余してる感じの表わし方が本当に上手い。寺島しのぶのメイは、うらぶれた安モーテルに一人住んでいる女には品が良すぎてキレイすぎる気がしないでもないけれど、終始ハイテンションで、揺れる感情や切ない心を澄んだ声で存分に吐露していてさすが。鮮やかな赤いドレスもとてもよくお似合いでした。

「ちょっと見て来るだけだから。必ず帰って来るから。」と言って部屋を出て行くエディ。「行っちゃったのよ。」と諦めたようにマーティンにつぶやくメイ。余韻の残る幕切れでした。


アメリカっていう国はとてつもなく広くて遠いの地獄度 ふらふら (total 186 わーい(嬉しい顔) vs 187 ふらふら)
ニックネーム スキップ at 04:19| Comment(6) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル
この記事へのコメント
スキップさま

ご覧になられたのですね!
サム・シェパード大好きなんです。
でも、スキップ様のおっしゃるとおり、日本人が演じるには難しいものがありますよね。彼の作品はあまりにアメリカ的ですものね。しかも、日常ですしね。

演技派のお二人に行定監督が舞台演出で、どうものにするのか観たかったのですが・・・やはり、難しいのかな。
素敵なお二人なので、また機会があれば共演して頂きたいです。
Posted by dandan at 2007年03月05日 22:07
♪dandanさま

サム・シェパード 脚本家としてはもちろん、俳優としても男性としても魅力的ですよね。
アメリカの深部を描く戯曲は難しいなぁ、と改めて感じました。
私にとっては、テネシー・ウィリアムズの「ガラスの動物園」なんかもこの類です。

寺島しのぶさんはハッピーニュースが飛び込んで来ましたね\(^o^)/
2月26日って、私が観たのは27日だったから、もうご結婚なさってたのですね〜。
Posted by スキップ at 2007年03月06日 00:24
>スキップさま
掃きだめに鶴のしのぶ姉上様。そこが良いところなのですが,演劇としては,取るところのない薄汚れた男女が何が悲しくて求め合うのかという方が,哀れさが引き立つのかもしれません。
凄まじいお二方の演技でした。緊張感がぶちっと切れたのもワタクシ的にはマルでした。
Posted by とみ at 2007年03月06日 00:34
♪とみさま

まさに“凄まじい”という表現がぴったりのお二人のぶつかり合いでした。
しのぶ嬢がいつにも増して輝いて見えたのは、まわりのくすんだ景色のせいか、
はたまたお幸せのなせるワザか・・・いやいやプライベートを舞台に持ち込むような
女優さんであろうはずもないことは、元より存じあげております。
Posted by スキップ at 2007年03月07日 01:28
はじめまして。
麗さんのブログのコメント欄でときどきお目にかかっています。ムンパリ@星月夜に逢えたら、と申します。
私は28日に観劇しました。
「フールフォアラブ」はサム・シェパードが好きなので個人的には楽しめたのですが、何も知らない人が見たとしたら、あの独特の空気感が伝わったのかな? そもそもそんなモノに最近の人は興味がわくのかな? と疑問に思ったのはたしかです。
でも、香川さん、寺島さんはさすがによかったと思います。
ちなみに、同作の映画では最後、エディはモーテルを飛び出し、伯爵夫人の車を追っかけます、馬で(笑)。血は繰り返される、ってことでしょうか。メイの「行っちゃったわ。」って言う台詞がなんともいえない終わり方ですよね。

またお邪魔したいと思います。これからもよろしくお願いします。
Posted by ムンパリ at 2007年03月08日 00:52
♪ムンパリさま

はじめまして。ようこそお越しくださいました。
私もムンパリさんのお名前はかねがねお見かけしておりました(笑)。

実は結構アメリカに思い入れがあって、なのに理解しきれないもどかしさの
ようなものが自分の中にあり、どうしても日本人が演じるアメリカ人を見る目
がシニカルになってしまうのですが、もちろん演劇としては十分すぎるほど
力量を発揮されたお二人でした。

さきほどムンパリさんのお宅にお邪魔しました。たくさんお芝居をご覧になって
いるのですね。同じ舞台もたくさん観ている一方、私の知らない世界も多数。
じっくり読ませていただきたいと思います。こちらの方こそ、今後ともよろしく
お願いいたします。
Posted by スキップ at 2007年03月09日 01:29
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