2007年07月26日

仁左衛門ベストセレクション

「義経千本桜」新中納言知盛、「身替座禅」山蔭右京、「女殺油地獄」河内屋与兵衛・・・不測の事態とはいえ、この3役を昼夜あの完成度で、あの緊迫感であのテンションで演じ上げる片岡仁左衛門の役者としての力量と気迫、精神力ににひれ伏すような思いで、席を立つのも忘れて打ち出しの幕を見上げました。

大阪松竹座 七月大歌舞伎 夜の部
7月21日(土) 4:15pm 松竹座 1階3列センター


清艶な美貌、清々しい口跡、そして何より戯曲に対する深い解釈が役に濃い陰影を与えている、と評される片岡仁左衛門。夜の部の2つの演目ではその眼の表情に感じ入りました。

「女殺油地獄」の河内屋与兵衛は仁左衛門さんの当たり役のひとつですが、実年齢により近い若い役者がやる方が好ましいと、ご自身で演じることを封印された役。今月不思議な縁で役の方から仁左衛門さんの元へ近づいて来たようにも感じます。あかんたれで甘えたで強がりで見栄っ張りでいい加減で、そのくせプライドだけは高くて、だけどどこか憎めない育ちのよい“ぼん”。

お吉殺しの場面。
何とかお金を借りようとあれこれ言い連ねていく中で殺意を抱くに至ったあの瞬間の表情が夢にまで出てきそうです。「最初は無我夢中で、だんだん心の中に残虐性が帯びてくる。そして傷だらけの鼠を猫がもてあそぶような快感を覚えてくる。」と開幕前の記者会見で話していらした心理描写、役作り(その時は海老蔵さんに教えるものだったけれど)を目の当たりに見せつけられて、一瞬たりとも目の離せない緊迫感溢れる場面でした。
IMG_2580.jpgさっきまで怯えていた目がにやりと笑う、狂気へと昇華する、やがて我に戻って恐れおののく・・。一つひとつの表情が何と美しく恐ろしく凄味を帯びて、そして色っぽいのでしょう。まるでこの役を演じるのは今生の最期とでも思っていらっしゃるかのような鬼気迫る熱演でした。

←花道に残った与兵衛の油の足あと。


「知盛」「与兵衛」の間にはさまれた「身替座禅」の山蔭右京は何ともかわいらしくホッとします。でも仁左衛門さんは脱力していません。目で笑顔で指先で足取りで体全体で、右京を余すところなく表現しています。花子のことが大好きで浮き浮きしているのはもちろん、山の神と恐れている奥方玉の井のこともほんとは愛しちゃってる風のラブリー右京。これまでいろんな人の山蔭右京を観たけれど、my best 右京です。以前に観た仁左衛門さんは奥方玉の井(右京は菊五郎さん)。あの玉の井も my best 玉の井だったんだけどな。あらま、どうしましょ。

それを言えば、もちろん与兵衛も知盛も入るし、6月歌舞伎座の徳川綱豊卿もすばらしかった、昨年の松竹座の一條大蔵卿もかわいかったなぁ、早野勘平には泣かされたし、そうだ、俊寛も、それにそれに・・・と数え上げればきりがありません。仁左衛門さんの my best selection を作ろうと思ったら、DVD何枚あっても足りませんね。

ひらめき仁左衛門さんはフォトジェニックでもあり、たくさん出ていた舞台写真はどれも欲しくなってコマル。「売り切れ」のものもあって、普段ならあっさりあきらめるのだけれど、どうしても欲しくて後日郵送をお願いしたところ、すぐに、しかもとても丁寧な手書きのメッセージつきで送られてきました。サンキュー松竹座売店!

「女殺油地獄」
河内屋与兵衛 片岡仁左衛門/お吉 片岡孝太郎/豊嶋屋七左衛門 片岡愛之助/与兵衛母おさわ 坂東竹三郎/河内屋徳兵衛 中村歌六

新古演劇十種の内「身替座禅」
山蔭右京 片岡仁左衛門/太郎冠者 片岡愛之助/奥方玉の井 中村歌六



役者揃いのその他の配役や「鳥辺山心中」についてはまた改めます、のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 232 わーい(嬉しい顔) vs 232 ふらふら)
ニックネーム スキップ at 00:45| Comment(8) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能
この記事へのコメント
スキップさん、仁左衛門さんのコレクションがたくさんたまってらっしゃるのですね! 羨ましいです。ナマ観劇歴の少ない私に、七月大歌舞伎の3作品はまさに恵みのシャワーでした。観劇の最後がいつも「女殺油地獄」なので帰宅するまでの間毎回、胸がずうううっと熱かったんですよ。ナマでしかわからない仁左衛門さんの底知れない魅力をぞんぶんに堪能でき、ほんとに幸せです〜♪ 今回私にも人に話せるコレクションがやっとできたかな!
千穐楽も観られたんですね〜。その後のオマケもゴージャス!(笑)仁左さま、役が入ってる時とそうじゃない時の落差もまた魅力ですね!
Posted by ムンパリ at 2007年07月29日 00:52
>実年齢により近い若い役者がやる方が好ましい
>と、ご自身で演じることを封印された役。
・・・でもでも、ぜ〜〜〜んぜん違和感なかったですよね!
むしろステキ♪当たり役!!・・・と思いながら
観劇させていただきました。
>仁左衛門さんは奥方玉の井・・・
うひゃ〜〜!これも見てみたい!また縁はあるでしょうかねえ?
私のベスト仁左様は昨年の勘三郎さんの襲名披露公演の『俊寛』ですっ!
あっれは!!凄かったなあ〜(ホレボレ)
『・・・油地獄』は、私は・・それでもやっぱり・・。
・・・くどいっ!(笑)
・・・今度ゆっくり聞いてください。この熱い思い・・。
・・・くどいっ!!(すいません)
Posted by かずりん at 2007年07月29日 21:32
♪ムンパリさま

仁左衛門さんと玉三郎さんは私の中で“別格”で、関西で興行される時は
できる限り拝見するようにしています。それがすべてベストセレクションに
なっちゃうんですよね〜(笑)。
オフの仁左衛門さんはいつもソフトなスマイル。
特にこの日はやはり千穐楽がはねた後とあって、ひと際はれやかな笑顔でした。
Posted by スキップ at 2007年07月30日 02:07
♪かずりんさま

ほんとに役者さんの年齢はあってないようなもの。
じゅうぶん若いあかんたれのぼんに見えましたよね。
玉の井もね、コワくもかわいらしかったのですよ。
あの時の菊五郎さん右京の困った顔も大好きで、今回仁左衛門さん右京観るまでは
my best 右京だったのですが・・・菊五郎さんといえば、すごかったでしょ、北千住観音!
俊寛もすばらしかったですね。昨年の南座は、舞台写真買っちゃいました。
さてさて、その字版油地獄。今度じっくり見てかずりんさんの熱い思いを感じたいと
思います。また感想聞いてやってくださいね。
Posted by スキップ at 2007年07月30日 02:18
スキップ様、まいど!
>今月不思議な縁で役の方から仁左衛門さんの元へ近づいて来たようにも感じます。
ホント、ホント。私も不思議な縁で大阪にいました。千秋楽に!行きました!
後進に道を譲って、もう仁左衛門では観れないの思ってましたぁ。
この世で再び会えてヨカッタぁ。
Posted by かしまし娘 at 2007年08月03日 17:30
♪かしまし娘さま

千穐楽、松竹座の屋根の下で、あの息詰まるような舞台で、
ともに仁左衛門さんの与兵衛を見つめていたのですね。
うれし〜&できればお目にかかりたかったぁ。
ワタクシもかしまし娘さんと不思議な縁を結びとうございます。
Posted by スキップ at 2007年08月04日 00:07
スキップ様、まいど!
縁を結びましょうか!
よかったらここに連絡して下さい。
大阪でサマーバケーションします。グフフ。
それではお待ちしてます。
Posted by かしまし娘 at 2007年08月06日 14:09
♪かしまし娘さま

大阪でサマーバケーション?
聞き捨てなりませぬ。
後ほどご連絡申しあげまする。
Posted by スキップ at 2007年08月06日 22:36
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのTrackBack URL
http://269g.jp/tb/4683802
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。