芸術祭十月大歌舞伎 通し狂言 「怪談牡丹灯籠」10月21日(日) 4:30pm 歌舞伎座 1階7列上手
原作:三遊亭円朝 脚本:大西信行 演出:戌井市郎
出演: 片岡仁左衛門 坂東玉三郎 坂東三津五郎 中村錦之助
片岡愛之助 坂東竹三郎 上村吉弥 中村七之助 中村吉之丞 他
ほんとに怖ろしいのは幽霊ではなくて人の心。業であり性。
劇中たくさんの人が死ぬけれど、不思議と後味の悪さの残らない、おもろうてやがて哀し、とても見ごたえのある人間ドラマでした。
怪談といってもこのお芝居に出てくる幽霊は二人きり−その二人が一番純粋だったりします。新三郎(片岡愛之助)に一途に恋焦がれて、焦がれ死にするお露(中村七之助)と、そのお露を思って殉死する乳母のお米(中村吉之丞)−このお米の幽霊は上手かったな。水から引き揚げられたみたいに肩を落として腕をだらりとたらして、震える声・・・見たことないけど、幽霊ってかくありなん、という感じです−この二人の死を発端に、いろんな人間模様が巡り始めることになります。
お露ちゃんファミリー: お露−乳母・お米−父・平左衛門−継母・お国−情夫・源次郎
お峰さんファミリー: 萩原新三郎−下男・伴蔵−女房・お峰−ご近所・お六
この2つのファミリーをつなぐのはお国(上村吉弥)。
お露の父 平左衛門(坂東竹三郎)の後妻で、隣家の次男坊源次郎(中村錦之助)とよい仲で、源次郎を養子にして跡取りにして財産を手に入れようと目論むも、叶わぬと知るや源次郎をけしかけて平左衛門を殺させ、たまたま目撃した女中のお竹(中村壱太郎)まで殺させて出奔。やがて足の萎えた源次郎を養うために酌婦となり、その美貌から伴蔵の思われ人となります。
いや、すごかったです、吉弥さん。美しくて艶やかで強くて色っぽくて情念の発露には気圧されるほど。悪女なのでしょうけれど、「たとえ奈落の底までも」と源次郎への想いを貫いて、無数の蛍が舞う中で迎える死はとても凄絶で哀しい。
頼りにならない優男・源次郎がまたいいカンジでした。錦之助さんの端正でやさしいお顔立ちが、この源次郎のイメージにぴったり。やっぱり甘く美しくなければ、お国も惚れませんからね。
新三郎・お露と伴蔵・お峰の2組がどちらか一方が他方を殺めるのに対して、源次郎とお国はどちらも自害ともとれる死に方なのも印象的でした。源次郎とひとつ刀で死ぬことができて、もしかしたらお国は幸せだったのかな。
主演カップルの伴蔵(片岡仁左衛門)・お峰(坂東玉三郎)は、もう、本物のご夫婦なのでは?と思っちゃうくらい息ぴったり。ほほ寄せ合ったりしちゃって、じゃれ合う時も喧嘩する時も、ほんとうに自然なやり取りです。
「阿古屋」のように圧倒的な美しさと存在感で見せる役ではないけれど、お峰の玉三郎さんはやはり尋常でない表現力を感じます。「100両くれたらお札を剥がすと幽霊に言え」と亭主をけしかけ、自分は怖いからと押入れに隠れるちゃっかりさんの面を見せたかと思えば、二幕でのキリッとした大店のおかみさんぶり、伴蔵の浮気を久蔵に問い詰める時に見せるやきもち、哀しみ、伴蔵との喧嘩・・・表情や仕草の一つひとつが魅力にあふれています。コメディエンヌとしての資質も披露してくれていて、思わず笑わされることもしばしは。それにしても「ちゅうちゅうタコかいな」は耳に残ります。
関口屋という大店の旦那に納まった伴蔵と貧しい時ほど心が寄り添えず、「伴蔵は変わってしまった、昔は貧しかったけれど幸せだった」と帰らぬ時を思うお峰。つかの間仲直りをして、おいしいものを食べて着物を買ってもらって幸せ気分のお峰に襲いかかる伴蔵の刃。傘の破れ目から覗く伴蔵の狂気。息絶えたお峰を抱きしめて「お峰〜」と号泣する伴蔵。あんなに仲のよかった二人なのに。「因果応報」という言葉で片付けられるほど単純ではない、人の心の哀しく果てない闇を感じさせる幕切れでした。
三津五郎さんの円朝、久蔵も最高!のごくらく度









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お国って本当に源次郎に惚れてるんですよね。
足手まといになっているんだし、見捨ててもイイわけでしょ。
最後の死ぬ場面は、恐いほど美しかったですね。
VIVA!吉弥
>もう、本物のご夫婦なのでは?
そうです!観てるこっちが恥かしいぃぃ。
>「ちゅうちゅうタコかいな」
今度からお金はこう言いながら数えます。
>元々文学座のために書かれた脚本だからかしら?
そうなんでしょうね。って4月にBSで文学座版観たのに…細かいことは忘れている。
スタンダードな歌舞伎版は、オチはこれじゃなかったです。…またまた細かいこと忘れている。
前回はあの世の人に心が残ったのに、今回はこの世の人の存在感が圧倒的で、
心に突き刺さりますです。
お国の「奈落の底までも」の台詞は、本当に迫力で、
かつ切羽詰った切なさもあって、心に残りました。
どの役もとても魅力的な舞台でしたね。
歌舞伎初心者の私ですが、この舞台を観れて、ほんとに良かったなあ、と思います。
でもって、「ちゅうちゅうたこかいな」、私も耳に残りました。
おばあちゃんがそういう風に数えてたなあ、と懐かしくて(笑)。
ダラダラと長く書かなくても、素晴らしいレポのスキップさん、アッパレでございます(笑)。
> 源次郎とお国はどちらも自害とも言える死に方なのも印象的でした。
あ、ここを読んで気づきました。だからなんですね。私も二人の死に甘美なものを感じたのですが、見方によっては心中ともとれるような死に方だからでしょうか。
> コメディエンヌとしての資質も披露
同じ日に天女をやって、天国から地獄まで(まるでスキップさんのブログみたい)。玉三郎さんって恐ろしいほど表現力の幅がある人なんですねえ。コメディエンヌ(コメディアン?笑)な玉三郎さんに拍手喝采です。
> 人の心の哀しく果てない闇を感じさせる幕切れ
伴蔵の心の闇がパックリ口をあけたかのように終わるラスト、圧巻でした。そっかー、これってつけ打ちもなく、文学座的幕切れなんですね。よかったですよね!ここ。
お国さんは一見打算的に見えるのに純粋に源次郎だけを愛していたんだなぁ、
と思うとあの死様はやはり美しく哀れでしたね。VIVA VIVA !吉弥さん。
スタンダードな歌舞伎版って、私観たことないのですが、土手のところから
お峰の白い手が出てきて伴蔵を引き込む、っていうあれでしょうか。
それはそれでコワイです(笑)。
でも今回の幕切れは、伴蔵もお峰も本当は愛し合っていたのに、何かボタンの
かけ違いというか、欲にまみれてしまった人間の心が引き起こした悲劇
という感じで、とても印象に残るラストでした。
お国の強い想いに対して源次郎のあかんたれぶりが際立つのですが、
いいオンナっていうのは往々にしてダメ男に弱いものですよね(?)
ほんとにすべての配役がピタリとハマったすばらしい舞台でした。
「ちゅうちゅうタコかいな」は、あのお峰の小判を数える時の真剣な表情を
思い出しても笑えてきます。おばあさま、ほんとにそういうふうに
数えていらしたのですね。私もついつい口に出てしまいそうです(笑)。
いやいやお恥ずかしいです。
書いてる途中で眠くなってしまって(笑)、何となく尻切れとんぼになってしまいました。
そうそう、正しくはコメディアンなのですが、玉三郎さんにはどうしても“女優”
というイメージを持ってしまって・・・(笑)。笑わせようとかギャグをかまそうとか、
そんなところ全然ないのに観ていて笑えるってすごいですよね。
あの幕切れは本当に印象的でした。
伴蔵の「お峰〜っ」ていう悲痛な叫びがいつまでも心に残ります。
色んな方のレポを読んでいるとフラッシュバックのように
よみがえってきます。
途中まではとても仲むつまじい伴蔵とお峰だったのになあ〜…
人の心とは雲のごとく…
私はお峰がもう少し気丈な女性なのかと思っていただけに
伴蔵にすがる様子が不憫でたまらなかったこともあって
斬られてしまったことが尚更後味が悪いというか
スッキリしなかったのかもしれません。
しかも仁左衛門さんに!ですもん。ぐすん。 伴蔵だけど〜…(苦笑)
後半のお峰はいかにもおかみさん然としているのに、
心は寂しかったのでしょうね。貧しくても言いたいことを
言い合って秘密もなかった昔と比べて、伴蔵を求める気持ち
が強くて、それで気弱になってしまったようにも見えました。
久蔵の前ではツッパッていましたが。
伴蔵にしても、お峰を想う気持ちは失ってなかったと思う
のですが。いや思いたい。仁左衛門さんだもの(笑)。
二人のこれまでの生きてきた道、“共犯”のいきさつなど、
そのえにしは刀で断ち切れるものではなかったのでは
ないかしら。
ぴかちゅうさんのところから参りました。
幽霊よりも人間の方が怖い。
本当にそう思いました。
TBさせていただきました。
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
トラックバックもありがとうございます。
「牡丹灯籠」は円朝さんの落語がベースだけあって、
幽霊話ばかりでなく笑いも散りばめられていましたが、
“怪談”というより人の心の内面を描いた見事なドラマでしたね。
お手数をおかけいたしますが、削除していただけるとありがたいです。
(夜の部を送信しました・・・)
原作も読みましたので、またそちらの感想も書くつもりです。
どうぞお気になさらずに。TBは差し替えいたしました。
昼の部を観ていませんので、みゆみゆさんのレポを楽しく読ませていただきました。
原作のご感想を読ませていただくのも楽しみにしています。
やっと感想を書き終えたので、遅ればせながら・・・。
いやぁ〜スキップさんの簡潔なレポに感心しきりです。
>お峰の玉三郎さんはやはり尋常でない表現力を感じます。
全くですね!
「阿古屋」での美しい玉三郎さんのイメージで観に行ってたので、
最初はオバちゃん役なのか。っとちょっと残念に思っていましたが、
なんのなんの!
めちゃくちゃ楽しませてもらいました♪
あんなに笑わせてもらえるとは、思ってなかったです。
「怪談」とは言え、この世で怖いのは幽霊じゃなくて、
生きた人間そのものなんですかね・・・。(笑)
「霊」の方がこの演目にピッタリだったかも?(笑)
玉三郎さんのお峰が登場した時は「え?」っていうカンジでしたが、
そのうち歌舞伎であることさえ忘れてお芝居に引き込まれてしまい
ました。いかにも笑わせようとか全然してないのにおかしいって
すごいですよね。
出てくる人すべてがぴたりハマった配役で、本当に見応えのある舞台でした。
幽霊もほんとは人間の心が創り出したものなのかも・・・と、このお芝居
を観て少し思いました。
3組の男女の愛憎にどれも思い入れてしまって長〜くなってしまっていたのですが、体調が今ひとつで一気に書き上げることができませんでした。11月歌舞伎座観劇前日に滑り込みで10月分の最後をアップした次第です。
「牡丹燈籠」は今回のバージョンも歌舞伎バージョンも未見だったのですが、今回とっても面白かったです。本当に豪華なキャストで見ごたえがあってこういう舞台を観ると幸福を感じます。仁左衛門×玉三郎の前半のいちゃつきぶりにも、後半の玉三郎の本当にいじらしいヤキモチにもやられ、気になった帯の撫子柄の花言葉まで調べてしまってまたジーンときました。
三津五郎丈の二役の円朝の狂言回しでぐいぐいと舞台がすすんだのも気持ちよかったです。
吉之丞さんも最近は要チェックの方になってます。お米にやられ、今月の「吃又」の将監の妻役にも泣かされてついに写真まで買ってしまいました(^^ゞ
私も「牡丹灯籠」は今回初見でした。
お露さん、とか、カラ〜ンコロ〜ンという下駄の音、とか
ぼんやり知っていたのですが、あんなふうに人間の心の内面を
描いたドラマとは意外でしたし、とても楽しめました。
もちろん、仁左衛門さん、玉三郎さんはじめ役者さんの力量に
負うところも大きいですよね。こんなベストメンバーで観る機会
に恵まれること、同じ時代に生きている幸せを感じますね。
帯の柄の撫子の花言葉の意味もぴかちゅうさんに教えていただいた
お陰で、ますますお峰さん(というか玉三郎さん?)がいとおしくなりました。