ルイジアナ州ニューオリンズは、アメリカ南部の面影色濃く残るミシシッピ川沿いの街。ジャズ発祥の地と言われ、黒人文化が根付いているところ。2005年8月には、ハリケーン・カトリーナによる壊滅的な被害を受けたことでも知られました。そんなニューオリンズに実在する路面電車(A Streetcar Named Desire)がタイトルとなった戯曲。「欲望という名の電車」
12月5日(水) 7:00pm シアター・ドラマシティ 8列上手
脚本: テネシー・ウィリアムズ 演出: 鈴木勝秀
出演: 篠井英介 北村有起哉 小島聖 伊達暁 明星真由美 ほか
ステラとスタンリー夫婦が暮らす町に、ステラの姉のブランチが訪ねてきます。『欲望』という名の電車に乗って、『墓場』という名の電車に乗り換えて…。家屋敷を手放した傷心のブランチを、ステラは温かく迎え入れ、3人の奇妙な同居生活が始まりますが、新しい土地に救いを求めてやってきたはずのブランチは、スタンリーとの軋轢によって過去の傷を暴かれ、やがて狂気へと破滅していきます。
篠井英介のブランチは、ステラの家に到着したその時からすでに狂気への道を踏み出しているという印象。まわりの人たちと明らかに違う空気感が漂います。若い頃の結婚の不幸な結末や、没落していく旧家を一人で支えなければならなかった重圧や、いろんなものと闘い、教師の職まで追われ、疲れ果て、現実を受け入れることができずアルコール依存と狂気へと逃避しているブランチ。高慢かと思えばオドオドした媚を売るような目つきをしたり、百戦錬磨の年増女のようだったり、恋に頬そめる少女のようだったり・・・観ているのも痛々しく、それは時として目をそむけたくなる残酷さでした。まぎれもない“女優”に違いないのですが、もしかすると男性だからこそここまで表現できるのかもしれないとふと感じました。
それにしても篠井英介は立ち姿や仕草がとても美しい。火をつけてもらって煙草を吸う仕草のカッコよさと言ったら。
「現実」を受け入れることができず、虚飾の世界へと逃避しているブランチに対し、社会の底辺にいるという「現実」に不満を抱き反発して、心に抱えた屈折したコンプレックスを暴力という形で爆発させるスタンリーは北村有起哉。
スタンリー=白いランニングに筋骨隆々というイメージが強かったので、登場の際のまるでアッパーミドルのAmerican boyのような赤いTシャツとふわりとした髪型にはいささか違和感あり。これは役者本人ではなく演出の問題でしょうか。粗野で狂暴というより、普段は冷静に物事をじっくり考えているのに、時々キレて手がつけられなくなる男、という印象でした。カーテンコールで見せてくれた照れたような笑顔が一番キュンときたりして。
演出といえばミッチ。
ミッチは中年の冴えない面体の男で、でも心はとても真面目で温か。プライドが高く、かつては美貌で、相手にもそれなりの容姿を求めたであろうブランチが、若い頃なら歯牙にもかけなかったようなミッチのやさしさに触れ、心を動かされ、やがて裏切られることになるところにその哀れが一層際立つという気がするのですが、さわやか好青年風でビジュアルもよし、の伊達暁では、そのあたりの説得力が弱まるのではと危惧しました。もっとも、初演、再演ともにミッチには田中哲司がキャスティングされていたということなので、鈴木勝秀さんの解釈はこうなのでしょう。
(以前に観た蜷川幸雄版のミッチは六平直政/ブランチ 大竹しのぶ スタンリー 堤真一 ステラ 寺島しのぶ)
「あなたたちみたいな人間がお姉さんを壊したのよ」と激昂し、去り行く姉を見送りながら涙するステラ(小島聖)。スタンリーにベタ惚れだけど、お姉さんのことも大好きなステラ。「また元どおりだ」とスタンリーは言ったけど、たぶんもう以前と同じには戻れない。姉を失い、夫も失ったステラ。心を遠くへ置いてしまったブランチより、むしろこのステラの悲しみが直接心に響いてきます。
明星真由美のユーニスもとてもよかった。包容力があり、いかにも気のいい世話好きの下町のおかみさんという感じ。のびやかな歌声も魅力的で、あんまり印象が違うので「ドラクル」のマリーだとは最初わかりませんでした。
暗転や幕のない場面転換には、走り去る列車の音と、80〜90年代のヴォーカル曲が使われていました。最後の曲は、ジョニ・ミッチェルかな?
開演前からプログラム売り切れの地獄度









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「写楽考」なんてもっとドロドロっとえぐって欲しかった・・・ミッチもスキップ様の意見に同感です。
篠井さんの煙草を吸う仕草は本当に美しかったですね、優雅で。スキップ様の文章を読んで思い出してうっとりしてます。
スキップさんのレポ読んで・・あぁぁ〜そうだそうだ!と納得の部分もたくさん!
私はラスト、医師に連れて行かれる凛としたブランチが忘れられません。
本当に素敵でした。
ステラの悲しみ・・本当に切なくなります。
そうか、サッパリ、そうですね。スズカツさんの演出は、演目にもよるのかも
しれませんが、ドロドロとした面は控え目で、スマートな印象ですね。
先日観た緒形拳さんの「白野」の鈴木さん演出だったのですが、確かに
サッパリ目だったかもしれません。
私は煙草を吸いませんが、もし吸うなら、あんなにカッコよく吸いたいなぁ、
と憧れてしまいます。
ラストの白いドレスのブランチはステキでしたね。
あのお医者さんの「ミス デュボア」という丁寧な響きにも心打たれました。
・・・あのドクターが鈴木慶一さんだったことを後で知って、ひっくり返るほど
驚きました(笑)。
(かつてムーンライダースの曲をよく聴いていたので)。
篠井英介というフィルターを通すと、毒気が抜けてるー。
いつまでたっても、汗臭さを感じないなぁ…。
咽返るような空気が漂ってこないなぁ…。
なんて考えて、私ったら無意識に、リアリズム演劇を欲してたようで(笑)
テレビでちょっと観ただけの、杉村春子ブランチの面影を引っ張ってしまったみたいでした…。
心に残るのはアンコールで登場した篠井英介の姿。美しかったです。
スタンレーを古田新太で観てみたい。と思ったら、既に演ってましたね…。大失敗。
アンコールの篠井さん、優雅な身のこなしに柔らかな笑顔
・・ステキでした。
ふるちんのスタンレーはねぇ。私チケットも取ってたのに
観に行けなかったんです。観たかったなぁ。
じゅんさんもいけそうですよね。
堤真一のスタンレーもよかったですよ。
かしまし娘さんがおっしゃっていた北村一輝もよさそう。
あと、思い切って山内圭哉ではいかが?だめ?
私はこれが初見でしたので観に行ってよかったなと思いましたが、やはりスズカツさんの演出ではずいぶん違うようですね。そこのニュアンスの違いがよくわかってナルホドと思いました。
最後はステラの悲しみが大きくクローズアップされたのは私も同じです。スタンリーがステラを抱きしめて言った言葉、3階席からではよく聞こえなかったのですが「また元どおりだ」と言ってたんだ〜。それはムリやろ!と私も思います(笑)。
これは違う配役、違う演出家で繰り返し見てみたい作品ですね。
ムンパリさんからいただいたプログラムのコピーを読んで、私も「なるほど〜」と
スズカツさんの演出や役者さんの役づくりの意図がわかったこともたくさん
ありました。ほんとうにありがとうございました。
確かに、この戯曲は演出や演者によってずい分ニュアンスが変わるかもしれません。
あと、観る側の心の状態によっても(?)感じ方が違ってくるかしら。